わたしの民を行かせなさい ――「華人キリスト者の越境と宗教実践」よりアンチディアスポラの文脈を展望して
10月22日(土)15: 25〜16: 25
アルベルトゥス=トーマス・モリ会員(国立民族学博物館外来研究員)
華人研究の蓄積がどんどん増えてきた一方、そのパラダイムがChinesenessに縛られて自家撞着な状況に陥っているともよく指摘されている。Shu-mei Shihが提唱したSinophone概念は、Chinesenessから脱却するためのアンチディアスポラという方向性を示唆した一方、それへの批判が彼女個人への人身攻撃までエスカレートしたことにより、華人研究が内包する政治性に対しては、もはやすべての研究者と当事者が意識してかつ積極的にリアクションを取るべきではないかと思われる。そこでは一旦「華人」の発祥元となる「中華文明」および「近代国家」という二つの問題に立ち返り、よりマクロな視座で関連構造への再検討を行う必要があると主張したい。拙著は恥ずかしいながらも、まさにそれを意識した上で行ったエスノグラフィーの試みであった。だが執筆の過程において、これは如何に大変な作業であるかを思い知らされた挙句、入口への方向提示になったらありがたいと思う気持ちで一区切りをせざるを得なかった。此度の講演では、その中途半端な論述を補完しつつ、未熟な故にうまく文章化出来なかった発想を同業の皆様と分かち合いたい。特に、そもそも華人研究の発展を促す大きな背景の一つである近代国家との緊張関係は、前近代の「帝国」の文脈においてはむしろミッレト制のような関係性の中に収斂できると考えられよう。さらに「帝国」は決して歴史の遺物ではなく、その存在意義はシュペングラーの文明論のような枠組みにおいて、近代国家よりも自明であろう。そのような広大な視野を用いて華人研究に臨めば、より一層当事者の「生」に近付く研究ができると、深く信じている。
上野千鶴子の「近代のミソジニー」を華僑華人研究の視点から読む
12月16日(金) 19:00-21:00 (Google Meetオンライン)
大阪大学の大学院生、研究生が勉強のために企画した研究会。上野千鶴子の「近代のミソジニー」(『女ぎらい――ニッポンのミソジニー』(紀伊國屋書店[2010年]、もしくは朝日文庫[2018年])所収)というテクストを参加者が読んできて、それをもとにディスカッションを行った。ディスカッションに先立ち、今回の水先案内人として大阪大学大学院でL G BT研究を行っている冨安皓行氏から、L G BT研究と、上野千鶴子の構造主義的なジェンダー論とは、議論が噛み合わず、平行線をたどってしまうという指摘があった。ディスカッションでは、この点を踏まえ、どのような研究が構造主義的な華僑華人研究で、どのような研究が機能主義的華僑華人研究になるのかを、中文と日文のバイリンガルによって議論した。
華僑華人文学研究入門2――日本語で読む馬華文学
7月21日(金)19:00-21:00(Google Meetオンライン)
舛谷鋭会員・立教大学
華僑華人文学研究入門(3回シリーズ)の2回目。日本語への翻訳という観点を導入することで、馬華文学のテクストをめぐる間テクスト性のさらなる深淵を、研究会参加者(受講者)それぞれが感じとった研究会であった。そこで何を学んだかは、研究会参加者(受講者)それぞれの胸中にあり、そのうち何らかの研究成果として本学会のディスカッション・ペーパに現れてくるはずであるが、筆者にとってとりわけ示唆的であったのは、規範性と審美性を基準とする言語とシミュラクルの鬩ぎ合いのはざまで書かれたテクストが、日本語を介することによってある種翻案されるという事態である。「ロンダリング」と表現することができるかも知れないこの事態は、すでにさまざまな批評家によって「密航」や「密輸」という語によって表現されてきた。こうなってくると、対象との距離を保ってきたと考えられてきた華僑華人研究のテクストも含め、日本語によるテクストは、馬華文学と同じ地平、あるいは渦中にあるようにも思えてくる。このオンライン研究会は、そうした地平や渦とはどういったものなのか、言語を機能主義的に捉える観点から東アジアのオラリティとエクリチュールを再考するまたとない機会となった。
The Present in Preparation: The Making of Photobooks on Kowloon Walled City
6月9日(金) 19:00-21:00(Google Meetオンライン)
コウ ガイヒン (KONG Hoi Pan)会員・オーストラリア国立大学
香港九龍城砦が今なお持つノスタルジックな喚起力はどのように生成されるのかを問いとする研究発表。香港九龍城砦に関しては、いくつかの写真集が香港内外で刊行されている。そうした写真集は香港九龍城砦が取り壊され、再開発されたのちも、おそらく実際には人びとが過去に経験したことがないにもかかわらず、あたかも「記憶」のように感じられる「郷愁」を喚起し続けている。攻殻機動隊に出てくる移民が押し寄せてくるエリアに対して私たちが感覚するものと同じような「郷愁」である。発表者のコウ ガイヒン氏は、そうした「郷愁」が生成されるメカニズムをエスノグラフィックに記述することをめざした博士論文を執筆中である。
華僑華人文学研究入門1――五四運動からサイノフォンまで
5月19日(金)19:00-21:00(Google Meetオンライン)
舛谷鋭会員・立教大学
華僑華人文学研究入門(3回シリーズ)の1回目。Sinophone Literatureに関する、批判を含めた近年における関心の高まりは、華僑華人――「ここにいることと別の場所の記憶のはざまで生きる中国系移民や子孫」という意味でそう呼んでいるのだが――の移動と定住の経験と、文学との関係を改めて問い直さざるを得ない状況を生み出している。しかし、「文学史」と言ったときのコンテクストの複雑さや、エクリチュールとオラリティの問題、文学的なテクストに関する研究なのか、それとも創作する人の研究かという逡巡もあって、華僑華人の文学的テクストの創造を、一つの全貌のなかに位置づけることが困難なことも事実である。このシリーズでは、華僑華人文学研究を地域研究の重要な一要素と位置づけ、長年に亘り、マレーシアの華僑華人の文学的テクストと向き合ってきた舛谷鋭会員に、水先案内をお願いし、多方面に亘る華僑華人研究に馬華文学研究の成果を活かしていくための着眼点についてご講義いただいた。
三池炭鉱と宮崎兄弟資料館見学会
2月18日(土)・19日(日)特別企画
熊本県北部に位置する荒尾は、孫文の盟友であった宮崎滔天の生家のある場所として、また明治日本の産業革命遺産である三池炭鉱があった場所として、本学会の会員にとって現地で学ぶことが多い場所の一つである。今回の特別企画は、熊本日日新聞の原大祐氏ほか、宮崎兄弟資料館、法雲山金剛寺のご協力により実現することができた。見学会ではご協力いただいた方々と参加者の間でさまざまなトピックに関するディスカッションが交わされ、かけがえのない学びの機会となった。筆者にとっての学びは、この地の過去の人々の経験が地層のように重なることで、その都度の新たな歴史が生み出されてきたということである。見学会二日目、参加者一行は、金剛寺の赤星善生住職のご案内で小岱山正法寺の中国人殉難者慰霊之碑と不二之塔を訪れた。この二つの記念碑は、1960年代、金剛寺の故・赤星善弘住職が正法寺の再建の前にすべきことがあるとして、賛同者とともに北部九州各地を托鉢し、3年かけて集めた浄財によって建てられた三池炭鉱殉難者の慰霊碑である。地元華僑ではニコニコ堂が多額の寄付を寄せている。当時は、冷戦のただなかで、また荒尾が三池炭鉱の城下町であったこともあって、周囲は必ずしも協力的ではなかった。そうしたなか、熊本には御詠歌を学びたいという地区ごとのグループが多くあり、住職はそこに出向いていっては御詠歌を人びとに教え、浄財を募ったという。その頃、九州では、御詠歌や和讃が流行しており、国家や企業の論理を越えて人びとは協力した。金剛寺の御詠歌は「岱山の峰にかかりし法の雲 照らすは金剛慈悲の御光」である。
冷戦は、宮崎滔天の顕彰にも影響している。孫文を支援した滔天であるが、戦後は中華人民共和国の側から評価されることが多い。植木学校、神風連の乱、西南戦争といったこの地の集合的な経験による地層の重なりに立ち、滔天は兄・八郎の意思を継いで自由民権運動を志す。孫文やエミリオ・アギナルド、マリアノ・ポンセの革命に対する支援も、この上に立つものである。滔天が人びとに自由民権運動や革命を語る言語としたのは浪花節である。60年代にこの地域で御詠歌や和讃が流行っていたように、宮崎滔天の時代、北部九州では祭文や浪花節が流行っていた。滔天は浪曲師桃中軒雲右衛門に弟子入りし、浪花節の節と啖呵で人びとに自由民権と革命を語った。浪花節にしても、御詠歌、和讃にしても、その語り口そのもの自体が地層に支えられているのかも知れない。三池炭鉱殉難者慰霊碑の建立を滔天が浪花節の言葉で語ったとしたらどのように語っただろうか。そのようなことを想像してみた。
第1回 在日中国人高度人材のキャリアパスの現状と課題――在日中国人のキャリアパスを考える
1月26日(木) 18:00-20:30 特別企画(zoomオンライン)
高度な専門知識と技能を持つ中国出身者のキャリアパスは、本学会における研究テーマの一つであるとともに、本学会の学生会員のかなりの数を占める、日本国外のさまざまな地域を出身地とする会員にとっては、将来の研究、さらにはライフスタイルに関わる切実な課題でもある。この特別企画では、楊寧静氏(立教大学社会学研究科博士前期課程)から「在日中国人高度人材のキャリアパスの現状と課題」と題する話題提供をしていただいたのちに、白井章詞氏(長崎大学多文化社会学部・准教授)からコメントと話題提供をしていただき、中国出身者のキャリアパス、とくに女性の高度人材のキャリアパスに注目し、彼女らが国際的に移動しながらキャリア形成をする際に直面する、社会構造上の課題や個人の生活史的な特徴について議論をした。この特別企画の課題は、日本社会がどのように国外のさまざまな地域を出身地とする人材を受け入れるべきかといった単純な課題ではない。東アジアの人の移動のなかで、日本社会がどのような位置づけにあり、移動する人材の結節点となることで、どのような新たな価値観を生み出すことができるかということに関わっている。それは東アジアの将来を展望し、国内、国外のいかんを問わず、人を育てるという課題にも繋がっていく。
言語の戯れにおける文化的アイデンティティ――香港における『神獣』のエスノグラフィック的考察
12月23日(金)19:00-21:00(Google Meetオンライン)
Li, Kris Chung-Tai会員・大阪大学
2010年代前半における香港の政治と関与する語りがいかに他文化からの語りを流用し、自分の状況(=語りによるアイデンティティ)を語り直してきたかについて、バース記号学による類像性(またはアイコン性、Iconicity)の概念を軸に、言語人類学の視点から考察した研究発表。ゴールデン神獣カードというインターネット・ミームの消費そのものが、どのように香港と中国の間の政治的状況となっているのかについて論じようとした。政治的な状況は、それを解釈する言語に外在するという考え方が一般的である。しかし、Li, Kris Chung-Tai氏はそうではなく、特に香港にように領域性によってとらえることが必ずしも有効ではない対象の場合、政治的な状況は語られずに済むというわけにはいかず、語られたことそのものとして現れると主張するのである。
2023年度日本華僑華人学会研究大会の報告
今年は、学会創立20周年にあたり、創立大会から数えて第21回の研究大会となりました。2023年10月28日(土)29日(日)の両日、神戸にて中華会舘の東亜ホールおよび会議室をお借りして実施しました。中華会舘・神戸華僑歴史博物館からの後援、神戸華僑華人研究会の協賛のもとで実施し、28日午前中には神戸中華同文学校の見学をエクスカーションとして企画しました。パネル3件、シンポジウム1件、自由論題4件の発表とともに、研究企画委員会主催の若手ライティグアップセミナー2件、「私の博士論文」で構成される2日間でした。来場者は延べ84人です。このうちJSSCOの会員は56人で、それ以外に神戸華僑華人研究会の会員や、華僑研究に関心のある会員外の方の参加を得て、活気のある催しとなりました。ご参加くださった皆様、実施を支えてくださった関係者の皆様に心よりお礼申し上げます。(文責:上田貴子 大会実行委員長)
会場:中華会舘(神戸)
10月28日(土)
9:30~11:30
エクスカーション(会員限定申込制) 神戸中華同文学校見学
13:15~15:15
実行委員会企画パネル「出入域管理から問い直す華僑・華人」
司会・趣旨説明:八尾祥平(東京大学)
報告者:村井寛志(神奈川大学)、 鶴園裕基(香川大学)、 持田洋平(神奈川大学)
コメンテーター:土佐弘之(神戸大学)、篠崎香織(北九州市立大学)
15:25~16:00
私の博士論文 岡野翔太(大阪大学)
「台湾系華僑」とは誰か:「華僑」として生きること、見なされること、語られないこと
16:00~17:00
総会
10月29日(日)
9:30~12:00
自由論題①個人発表(会場1)
②ライティングアップセミナー(会場2)
①個人発表
9:30~
楊苹(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
「伝統的なマレーシア華人」表象の再構築へ:民族博物館と歴史授業における華人表象から
10:10~
謝格菲(神戸大学大学院人文学研究科)
華僑家庭の生活と苦悩 ――陳舜臣の小説における家族描写
10:50~
靳超(山口大学大学院東アジア研究科)
20世紀後葉における華僑送金に関する歴史的研究
11:30~
小林宏至(山口大学)
ガーナにおける華僑のマイクロビジネス――ある華僑のライフコースとオンラインネットワーク――
②ライティングアップセミナー(会場2)
10:10~
川村潤子(名古屋大学大学院人文学研究科)
東海地域の中華料理店店主の移住の実態――安徽省ネットワークを中心に――
11:05~
李念(東京大学大学院総合文化研究科)
東南アジア華人と中国大陸との結びつき様式から見る中国認識と「再華化」――インドネシアとマレーシアの事例――
12:00~13:00
昼休み
13:00~15:00
神戸企画シンポジウム「地域社会における華僑文化遺産の維持、保全、活用」
司会・趣旨説明:上田貴子(近畿大学)
報告者:小川正樹(函館ラ・サール中学校・高等学校)、伊藤泉美(横浜ユーラシア文化館)、安井三吉(神戸華僑歴史博物館)、陳東華(長崎福建会館)
コメンテーター:曽士才(法政大学)、金明柱(同志社女子大学)
15:10~16:00
神戸企画パネル「佐々木陵子氏写真展トークショー」
司会:鶴園裕基(香川大学)
登壇者:佐々木陵子(写真家)
コメンテーター:伊吹唯(熊本保健科学大学)
[連動企画]
佐々木陵子写真展「Roots in a new」
会場 神戸華僑歴史博物館(入館料 一般:300円・学生(中学生以上):200円)
会期 10月18日(水)~10月30日(月) 開館時間10:00~17:00
16:10~18:10
実行委員会企画パネル
「アジアの中の神戸と華僑華人―マッチ産業と商人ネットワークの多様性―」
司会・趣旨説明:工藤裕子(東洋文庫)
報告者:水野敦洋(香川大学)、大石高志(神戸市外国語大学)、蒋海波(孫文記念館)、工藤裕子
コメンテーター:平井健介(甲南大学)
18:10
閉会
日本華僑華人学会 2023 年度大会実行委員会
上田貴子(委員長)、陳來幸、易星星、岡野翔太、八尾祥平、工藤裕子、鶴園裕基、水野敦 洋、川村潤子
2022年度日本華僑華人学会
2022年度第20回年次研究大会は、2022年10月22日(土)・23日(日)の両日、神奈川大学みなとみらいキャンパスにて開催されました。
本年度の研究大会は対面で行われました。大会に参加できなかった会員には、今後、オンライン配信の予定です。
横濱中華學院でのエクスカーションに始まり、個人発表やパネル発表、開催校企画のシンポジウム(I)神奈川大学非文字資料研究センターとの共催、シンポジウム(II)中国語学科との共催が行われました。また「私の博士論文」と若手ライティングアッップセミナーを、同時に日本華僑華人学会2022年度第1回研究会としても位置づけ、実施しました。
一般参加者を含め123人が参加し、活発な議論が行われました。新聞やテレビなどメディアの取材も多く、シンポジウムの内容がニュース番組(NHK)でも報じられました。
大会実行委員会を代表し、参加者、関係者の皆さまに改めて御礼申し上げます。
(文責:村井寛志大会実行委員会委員長)
2021年度日本華僑華人学会研究大会の報告
2021年度第19回年次研究大会は、2021年10 月30日(土)・31日(日)の両日、大阪大学箕面(船場)キャンパスにて開催されました。
本年度の研究大会では、対面、オンラインのハイブリッドで行われ、遠くはスロベニアやデンマークからの参加者も交え、71名の会員、7名の非会員が2日間の活発な議論に参加した。
ここに大会実行委員会を代表し、参加者、並びに関係者の皆さまに改めて御礼申し上げます。 なおオンラインに関しては、Google MeetとZoomを併用しました。
一部、Zoomにおいて不具合があり、関係者にご迷惑をおかけする場面もありましたが、実験的な試みとしては、全体的にはうまく動かすことができたのではないかと考えております。
(文責:宮原曉 大会実行委員会委員長)
2020年度日本華僑華人学会研究大会の報告
2020年度第18回年次研究大会は、2020年11 月14日(土)・15日(日)の両日、山口大学 吉田キャンパス 人文学部 大講義室にて開催された。
本年度の研究大会では、41名の参加会員、及び山口大学のスタッフの並ならぬ努力により、徹底したコロナウイルス感染拡大防止対策が取られ、山口県内でクラスターを発生させることもなく、また事後、参加者の感染も確認されることもなく、2日間の日程を実りあるものとすることができた。
多くの学会や研究集会がオンラインでの研究成果の公開を行うなか、もちろん比喩的な意味ながら参加者の「謦咳」を感じる記憶に残る研究大会を持てたことを、ここにご報告申しあげるとともに、参加者、並びに関係者の皆さまに改めて心より御礼申し上げます。
プログラム
11 月14日(土)
13:50-14:50
book review section
15:00-17:30
開催校企画セミナー「華人めし」
趣旨説明:小林宏至(山口大学)
話題提供:川口幸大(東北大学)
櫻田涼子(育英短期大学)
宮原曉 (大阪大学)
17:45-18:45
総会
11 月15日(日)
8:45
受付開始
9:00-10:20
個人報告 第1セッション
9:00-9:40
戴寧(東京都立大学)
「中国にルーツを持つ子どものバイリンガル教育における実践-コーチング型学習塾を事例に」
9:40-10:20
趙師哲・田中共子(岡山大学)
「『新華人』を対象とした文化変容方略と適応に関する事例的研究」
10:30-11:50
個人報告 第2セッション
10:30-11:10
辺清音(国立民族学博物館)
「中華街における地域性の表出-神戸南京町生誕150年記念事業を事例に」
11:10-11:50
津田浩司(東京大学)
「『共栄報』に見る日本軍政初期ジャワの華僑社会」
13:00-16:00
商品資料館・東亜経済研究所見学会
参考URL: http://www.econo.yamaguchi-u.ac.jp/ecmus/
(文責:小林宏至 大会実行委委員長)
2019年度日本華僑華人学会研究大会の報告
2019年度第17回年次研究大会は、2019年10月26日(土)に近畿大学東大阪キャンパス(G館201教室)にて開催されました。
プログラムは以下のとおりです。
首都圏を離れての開催でしたが、43名(一般会員32名・一般非会員2名・学生会員7名・学生非会員2名)の参加者がありました。
自由論題は午前中に2つ、お昼休みを挟んで午後に2つの合計4つで、バランスよく歴史分野と現代分野をとりあげたものが2つずつとなりました。
午後の後半には大阪に立地する近畿大学ならではの企画として、「大阪華僑・華人の戦後」と題して開催校企画シンポジウムを行いました。
3名の報告者はそれぞれ料理店・学校・留学生をとりあげ、参加者からも積極的な発言が得られ、大阪の華僑・華人を対象とした研究の不足を補うようなシンポジウムとなりました。
懇親会にも30名の参加があり、盛会のうちに終了いたしました。
10:40~11:45
自由論題
10:40~11:10
小川正樹(函館ラ・サール中学校・高等学校)「海峡を挟む華僑社会の活動の軌跡―北海道と南樺太、そして青森・秋田・岩手―」
11:15~11:55
白皓(早稲田大学大学院博士後期課程)「子であり親である「第二世代」はどのような言語ビリーフを抱いているのか―日本在住のニューカマー華人への質的調査から―」
11:55~13:25
お昼休み(理事会 G館203号室)
13:25~14:35
自由論題
13:25~13:55
伊藤泉美(横浜ユーラシア文化館)「横浜華僑と旗袍―服飾史からのアプローチ―」
14:00~14:40
共同報告 趙師哲(岡山大学大学院博士後期課程)・田中共子(岡山大学)「在日中国人の文化変容態度に関する探索的研究」
14:50~17:30
開催校企画 開催校企画シンポジウム「大阪華僑・華人の戦後」上田貴子(近畿大学)「戦後大阪神戸における山東幇の生存戦略―山東系中華料理店のビジネスモデルを中心に―」
陳來幸(兵庫県立大学)「翻弄される戦後冷戦期の華僑社会―大阪中華学校を中心に―」 飯塚君穂(近畿大学)「戦後日本の高等教育における台湾人学生の受け入れ―近畿大学を一例として―」
コメンテーター:安井三吉(神戸華僑歴史博物館) 許淑真(摂南大学)
(文責:上田貴子 大会実行委員長)
2018年度 日本華僑華人学会研究大会の報告
2018年度第16回年次研究大会は、2018年11月17日(土)に、以下のプログラム通り、東洋大学白山キャンパスにて開催されました。一日で大会のスケジュールを組みましたので、朝9時半からのスタートでした。
参加者は56 名(一般会員44 名、非会員 8名、学生・優待会員4名)で、盛況のうちに終了しました。
午前中の分科会では、客家系商人家族の事例と共に、東アジア・東南アジアという現代の地域概念に規定されない華僑華人ネットワークのダイナミズムが、19世紀から1960年代にかけての歴史的過程の中で議論されました。
この学会にふさわしい学際的、かつ新しいアプローチを提示する内容の濃い分科会でした。
続いてお昼休みを挟んで、4つの個人発表がありました。多様なテーマを取り上げたご発表で、各発表において活発な議論が交わされました。
翌日に若手ライティングアップセミナーが企画されていたこともあり、大学院生による発表はありませんでした。
開催校企画シンポジウムでは、「変貌を遂げる21世紀の華僑社会」をテーマに、シンガポール、イタリア、ボツワナ、そして僑郷の事例が報告されました。
質疑応答に時間的余裕がありませんでしたが、華僑華人社会の近年の変化に目を向けさせるものでした。
懇親会では、16階からの東京の夜景を楽しんでいただきながら会員相互の懇談の輪が広がりました。
9:30-11:30
分科会「東南アジア・東アジア間の華僑華人ネットワーク再考―客家系商人家族の事例研究から」代表者:芹澤知広(奈良大学)
発表者:工藤裕子(東洋文庫)、陳來幸(兵庫県立大学)、芹澤知広
司会・趣旨説明:北村由美(京都大学)、コメンテータ:古田和子(慶應義塾大学)
11:30-12:30
個人発表
11:30-12:00
宮原 暁(大阪大学)「『僑批』と『唸経』の文脈-華僑華人研究における多声的翻訳モデルの可能性」
12:30-13:00
石川朝子(帝京大学)「日本の中華学校の教育改革の現在」
12:30-13:30
お昼休み (理事会:8号館セミナー室5)
13:30-14:30
個人発表
13:30-14:00
横田祥子(滋賀県立大学)「ダヤック人の神格化に見る世界観の交差-インドネシア西カリマンタン州の民間信仰から」
14:00-14:30
王 維(長崎大学)「ザンジバル華人社会の再構築」
14:40-17:40
開催校企画シンポジウム「変貌を遂げる21世紀の華僑社会」 趣旨説明:山本須美子 (東洋大学)
登壇者:奥村(平島)みさ(東洋大学)「新華僑が変えるシンガポール華人社会」
田嶋淳子(法政大学)「イタリアにおける中国系ニューカマーのコミュニティ形成をめぐって」
シ・ゲンギン(京都大学)「南部アフリカにおける新華僑」
川口幸大(東北大学)「21世紀の僑郷-何が変わり、何が変わっていないのか」
コメンテータ:山下清海(立正大学)、張玉玲(南山大学)
17:50-18:30
総会
18:45-20:45
懇親会
(文責:山本須美子 大会実行委員長)
日本華僑華人学会2021年度第1回研究会の報告
2021年度第1回研究会を2021年10月30日(土)に大阪大学で開催した。研究会は、若手ライティングアップセミナーとして、若手会員による発表と「私の博士論文」の2部に分けて行った。プログラムは以下の通りである。
開催日時:2021年10月30日(土)
第1部 9:50~11:50
第2部 13:00~14:10
開催会場:大阪大学箕面新キャンパス(船場キャンパス)
第1部 若手ライティングアップセミナー
発表者1:郭文琪会員(大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得満期退学)
時間:9:50~10:30
「日本における中国人ライフスタイル移住者のネットワークの構築-大阪在住者の事例に基づいて」
コメンテーター:曽士才会員、廖赤陽会員
発表者2:郝洪熠会員(長崎大学大学院多文化社会学研究科博士後期課程)
時間:10:30~11:10
「12-15世紀における華商貿易の展開-日中両国間の銭貨流通状況をめぐって」
コメンテーター:陳来幸会員、李正熙会員
発表者3:張申童会員(名古屋大学大学院人文学研究科文化動態学博士後期課程)
時間:11:10~11:50
「名古屋における中国人新移民とその社会空間の構築-春節祭を中心に」
コメンテーター:陳天璽会員、張玉玲会員
第2部 「私の博士論文」
発表者:鶴園裕基会員(早稲田大学地域・地域間研究機構客員次席研究員)
時間:13:00〜14:10
発表タイトル:「政治学的華僑華人研究への道のりを振り返る」
博士論文題名:「戦後東アジアの地域秩序再編と日本華僑-日台間人の移動管理体制の形成(1945-1952)」
2021年度第1回研究会は、研究大会の前に開催されたこともあり、多くの会員が参加した。今回の若手ライティングアップセミナーでは、郭会員、郝会員、張会員の3 名の発表があった。それぞれの発表に対して、中国人ライフスタイル移住者のネットワークの構築、12-15世紀における華商貿易の展開および、中国系新移民とその社会空間の構築などの問題をめぐって、曽会員、廖会員、陳来幸会員、李会員、張会員、陳天璽会員の6名のコメンテーターから、研究論文の作成にあたり、大変貴重かつ学際的な意見があり、とくに論文の作成にあたり、より具体的なアドバイスと建設的なコメントもあった。 第2部の鶴園会員の発表は、博士論文の内容だけではなく、博士論文の完成に至るまで、すなわち学問を始め、 深めていく過程の中で影響を与えられた出来事、文献調査の手法などについても展開しながら、どのように博士論文を作り上げていったのかを紹介するものであった。そして、最後に博士論文提出後の今後の研究の課題と発展性についても紹介された。フロアからも質問が多数出された。若手会員だけでなく、参加者の皆さんにとっても有意義かつ実りある研究会であった。
(文責:王維 研究企画委員長)
日本華僑華人学会2020年度第1回研究会の報告
2020 年度第 1 回研究会を 2020年 11月 14 日(土)に山口大学で開催した。研究会は、若手ライティングアップセミナーとして、若手会員による発表と「私の博士論文」の2部に分けて行った。プログラムは以下の通りである。
開催日時:2020年11 月14日(土)9:30~12:40
開催場所:山口大学 吉田キャンパス 人文学部 小講義室
第一部 若手ライティングアップセミナー
時間:9:30-11:20
発表者1:酒艶悦会員(北海道大学大学院教育学院多元文化教育論講座博士後期課程)
発表タイトル:「外国人非集中地域における継承語としての中国語教育の考察-札幌市を例として」
コメンテーター:石川朝子会員、高橋朋子会員
発表者2:郁識会員(大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程)
発表タイトル:「華文から見られるアメリカの新移民作家の位置付け」
コメンテーター:大井由紀会員、舛谷鋭会員
発表者3:Hao Hongyi会員(長崎大学大学院多文化社会学研究科博士後期課程)
発表タイトル:「11-14世紀西日本における華商渡来銭の流通状況に関する研究」
コメンテーター:廖赤陽会員、芹澤知広会員
第二部 「私の博士論文」
時間:11:30-12:40
発表者:辺清音会員(国立民族学博物館外来研究員)
発表タイトル:「初心にかえる-初めて南京町に行ったあの日から博士論文提出まで」
博士論文題名:「神戸南京町 50 年の民族誌的研究-包摂的チャイナタウンの生成と変容」
研究大会の前に開催されたこともあり、多くの会員が参加した。今回の若手ライティングアップセミナーでは、酒会員、郁会員、Hao会員の3名の発表があった。それぞれの発表に対して、非集中地域の華人教育問題、華人文学と新移民の位置付け、歴史上の渡来銭と華商の役割などの問題をめぐって、石川会員、高橋会員、大井会員、舛谷会員、廖会員、芹澤会員の6名のコメンテーターから、研究論文の作成にあたり、大変貴重かつ学際的な意見があり、とくに論文の作成にあたり、より具体的なアドバイスと建設的なコメントもあった。フロアからも質問が多数出された。若手会員だけでなく、参加者の皆さんにとっても有意義かつ実りある研究会であった。
第二部の辺会員の発表は、博士論文の内容だけではなく、博士論文の完成に至るまで、すなわち学問を始め、 深めていく過程の中で影響を与えられた出来事、フィードワークの手法や指導教員の指導プロセスなどについても紹介しながら、どのように博士論文を作り上げていったのかを紹介するものであった。また、最後に博士論文提出後の今後の研究の課題と発展性についても紹介された。最後の質疑応答では、フロアからも多数の意見が出された。
(文責:王維 研究企画委員長)